After Story 外伝 貴方が隣に居ないということ
By 麓樹
パプニカ城の裏側のふもとにある海岸の先に、ひとつの剣が突き刺さっていた。 太陽の光に当てられ、柄に埋め込まれている宝玉が煌いていた。 否、光に当てられているだけではない。 剣そのものが生きていることをあらわしているようだった。 不意に、剣の光を遮る影が浮かんだ。 太陽が雲の中に隠れたのか? そうではないようだ。 雲ひとつない青空の中で、何故剣の上に影が・・・? その理由は簡単だった。 一人の人間が剣の前に立っているせいで、太陽の光を遮っているのだ。 剣を照らす代わりに、人間の金髪が太陽の光にあてられて、キラキラと光り輝いていた。 優しい風が人間の髪を吹かれ、手で金髪をおさえていた。 そして、空のように深い蒼色の瞳が突き刺さっている剣を愛しげに眺めていた。 「・・・・・ダイ君・・・・・」 ごく小さな、聞き取れないぐらいの声でつぶやいていた。 声からすれば、まだ大人になりかけの少女だ。 そう・・・彼女は、先日、即位したばかりのパプニカ王国の女王である。 片手が差し伸べられ、指先が剣の柄に触れた。 それだけで、彼女は剣の持ち主を・・・ダイの最後の姿を思い浮かべる。 黒の結晶とともに天空のかなたへ消えていったダイの後姿を・・・・。 「ダイ君・・・早く帰ってきてよ・・・・」 それは切ないまでの彼女の願望。 ダイが消えてから、一年の時が流れている。その間に世界は平和へ向けての修復に取りかかっている様が見られていた。 その時の中で、彼女は女王として即位され、ダイが守ってきた地上だと誇らしく胸をはれるように、彼女と、共に戦ってきた仲間達と日々奮闘している。 けれど、彼女は強い少女であっても、心の奥底までは強くなれない。ダイが隣にいないのがさびしいのだ。 どんなに時間がかかってもずっと待ち続けている彼女の姿を、剣に埋め込まれている宝玉はどのように映っているのだろう。 剣に声を発することはない。ただ静かに光り輝いているだけだった。 彼女はそのままずっと時間の許す限りこの場を動かなかった。
--- Fin ---
後書き(反転)---------------------------------H17.3.26up ・・・After Storyの外伝です・・・。 まさか、外伝を書くとは予定外でした・・・。 ダイが消えてから一年後のレオナの様子ですね。 レオナって強い少女だってわかっているんですけど、ダイがいないんでしょ。 で、やっぱり恋する女はいつだって不安なんですよね。 愛しい人が隣になくて、結構心に痛みがするんですよね。 でも、結局うまく表現できないなぁ。 進歩ないな。管理人としては情けないなぁ。 少しずつ頑張っていくとするか。 では、最後まで読んでくださってありがとうございます。
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