ヘリオポリス


by 麓樹






 栗色に藍色の網線がしるされているA4サイズの皮鞄を背につるされて歩いている少年がいた。




 炎のように燃えるような紅の髪に深い蒼色の瞳をしていた。




 すれ違う人たちに軽く挨拶を交わし、ゼミを受ける教室へ向かう先に、二人の少年が赤い髪の少年に気づき、手を上げた。






「フレイ!二ヶ月ぶりだな!!」




 こげ茶色の少しウェーブのかかった髪形の少年・・・トールだった。




 彼に応えるように軽く手をあげた。






「よう、トール、サイ」






 ぱんっ




 トールとサイに軽く手を叩きあうフレイ。






「きつかったか?」






 主語が抜けていたが、それだけで問いの意味はわかっていた。






「あぁ。きつかった。あの親父のせいだ!」






 わずかに不機嫌な表情を浮かべて応えるフレイ。




 フレイの表情に、サイは苦笑を浮かべた。






「大変だな。お前んとこの事情は・・・」




「全くだ・・・。まぁ、そのかわりにこのヘリオポリスで通う事ができるんだから仕方ないさ」




「そうだな。あぁ、そうだ、これ」






 思い出したかのようにかばんの中をあさりながら何かを取り出して、フレイの目の前に差し出された。




 思わず受け止めると、データケースらしきものだが、何の事か疑問の表情を浮かべながらサイにたずねた。






「なんだ、これ?」




「それ、お前が休んだ二ヶ月分の課題とレポートだ」






 うげっと嫌そうな表情を浮かべるフレイに、サイは気にした風もなく話を続けた。






「本当なら、今週中が締め切りなんだが、特別に来週までに延期してくれたぞ」




「来週までかよ・・・」






 げんなりしたフレイの姿に、トールとサイは苦笑を浮かべて、フレイの肩にぽんと叩いた。






「手伝いたいが、フレイのやつと僕たちの科目は違うからあまり力になれない。すまんな」




「うぅ・・・」






 さらに過酷な言葉を言われて、がっくりとうなだれるフレイの姿に、トールとサイはご愁傷様といった感じでぽんぽんと肩を軽く叩いていた。






「まぁ、フレイの頭脳なら何とかなるさ。だろ?」




「んな、簡単にいうなよ・・・」






 人事だと思って文句を言い返してやりたかったが、データケースを取っておいてくれた二人にそこまで言うわけにはいかず、礼を言わなければならないのはこちらのほうだ。




 けれど、課題を終えるまでの時間はあまりにも短い。




 課題を終えないと、単位が取れない。しばらくはゆっくりできないなと思った。







◆ ◆ ◆ ◆








「メイさん、Aランチひとつ!」




「はいよっ・・・・おやっ、フレイ君じゃないか」






 カウンター前に立つふっくらとした優しげな40代の女性メイが驚いた表情を浮かべた。




 メイの言葉を聞き取った後の複数の人たちが一斉にフレイに振り向いて声をかけた。






「えっ、フレイ君!?」




「フレイ君!顔が見れなくて寂しかったぞ!ひどいじゃないか!」




「どうしたんだい?二ヶ月も休んでたって聞いてたが、体のどこか悪かったのかい?」






 いっぺんにまとめて声をかけられ、ごまかし笑いを浮かべて頭を掻きながら答えた。






「いっぺんにいわんといてくれよ。ちょっと家の都合でさ、体はなんともないよ」






 その言葉にほっとしながらも、手は休んでいない。




 長年のせいか、体が覚えているようで、よそ見しても十分できるように料理しているメイたち。






「そうかい、あまり姿が見かけなかったから、どうしたのかと心配しちまってね」




「ごめん。心配させちまって」






 そんなに心配かけさせてしまったんなら、休む前に一言伝えておけばよかったかとちょっぴり後悔するフレイ。




 そんな彼に、メイは微笑みながら首を振った。






「いいさ。元気な姿見れたし、あたしたちは嬉しいよ。・・・で、注文はAランチだったね、ちょっと待っておくれ」




「おぅ」






 テーブルにトレイを置き、Aランチの準備をし始めるメイたち。




 フレイの隣にいたトールがかばっと首に腕を回してニヤニヤした顔でからかう声を出した。






「モテモテだな〜。フレイ」




「だぁっ、やめろよっ、トール!」






 眉毛をひそめながら、首に絡まったトールの腕に自分の手でつかんではずすフレイ。




 じろっと睨むフレイに、どうどうといさめるようにフレイの前に両手を出してみせるトール。






「照れない、照れない、ほれ、かっこいい顔が台無しだぞ」




「誰が照れるかっ!そもそも誰のせいだと思っているんだよ!」




「俺」






 否定もせず、即答に答えるトールに、フレイは言葉に詰まり、ぱくぱくと口を開けていた。




 フレイのそのしぐさが面白くて、わざととぼけて付け加えた。






「あれっ、いつから魚になったんだ?ここは水の中じゃないぞ?」






 反対側に立っていたサイまでもが、トールの話に乗ってしまった。






「え?そうなのか?にしては、人間の姿をしているな」




「そういやぁ、昔生き物は水から生まれるって言うから、・・・って、今の姿になるずっと前の魚に戻ったのか?それは大ニュースだな」




「そういうの原始がえりっていうんじゃないか?」




「いやいや、あれだよ。もともと、フレイは特殊な能力持っているからその類まれがそれを呼び覚ましたんじゃないのかな」






 なるほどといった風で、片手のひらに一方の握りこぶしをした手をぽんっと叩いた。






「なーる、だからなのか。でもさ、なんでAランチ頼んだんだ?水の中で暮らす魚では、プランクトンとか食べるだろ」




「ここは水の中じゃないだろ?陸の中で過ごしているんだから、俺たちと同じように酸素を吸っているんだ。単に、俺たちの真似をしているだけだろう」




「真似・・・・そうか、寂しくて、僕たちに入ってきたんだな。心配するな!僕たちはお前を見捨てたりしないぞ。気味悪がったりはしないぞ?」






 真剣な顔でフレイの両肩に手を置くサイに、フレイはぷるぷると肩を震わせていた。






「・・・・・・お前らなぁ・・・・」






 フレイの頭に怒りのマークがでっかくついている。




 怒りのためか、低い声が漏れていた。








「もぅっ、二人ともいいかげんにしてよ!邪魔よ!」








 フレイとトールたちの間に別の声が割り込まれ、聞こえた方へ振り向くと明るい栗色のくせっ毛のついたショートカットの女の子がトレイを両手に持ちながら立っていた。






「「「ミリィ」」」






 見事なユニクロで彼女の名前を呼ぶフレイたち。




 呆れた表情を浮かべながらカウンターに視線を促すようにフレイに向けてこういった。






「注文した物とっくにできているわよ。メイさんが困っているわよ!」




「え?」






 彼女に言われてカウンターの方へ振り向くと、苦笑しながら両手を腰に手を置いているメイたちが・・・。






「やっと気づいたね。ほら、Aランチおまち!」




「あ・・・・、ありがと・・・・」






 今のやりとりを見られたのが恥ずかしかったのか、自分の顔が熱い。




 おそらく耳まで真っ赤になっているだろう・・・と思いつつ、両手でトレイをつかみ、この場から逃れるようにそそくさと空いている席へ向かうフレイ。




 トールもサイもあわててトレイを両手に持ち、フレイの後をついていった。












続く・・・・(かも?)








あとがき・・・(反転)
H17.3.10up!

・・・・・・へたれですねぇ・・・。
トールとサイにからかうフレイだけど、どうですか?

え?だめですか?

うーん、作者としては結構、こんなフレイたちが好きなんだけど、性格がかなり(ちょっと!?)違うかな・・・。
ちょっぴりだけど、ミリィも出ているし、オリキャラも出てるし・・・。
あ、オリキャラのメイという名前は特に意味はありません・・・
なんとなくつくっただけで・・・・。(^_^;;)
キラは・・・でてないなぁ。
たぶん、連載かもしれないなぁ。
正直言うと、フレキラかキラフレを最終的に目指していますが、話が・・・・<汗>
ま、とりあえず、どうか見捨てずに見守ってくださいませ・・・・

あと、感想メールいただいてくだされば励みになります。

では、次が出るのはいつになるんでしょうか・・・<汗>