永遠の約束







『ルールー、約束しよう。』
『何?』
『全てが終わったら、ビサイドに帰ろう。そして、見せたいものがあるんだ』
『見せたいもの?』
『うん。偶然見つけたんだけど、ビサイドの山にね、光るものがあるんだよ』
『光るもの…?』
『そう、すごくきれいなところなんだ。多分俺だけが知ってる。だからさ……』
『わかったわ。約束ね?』
『おう!』



 ティーダの嬉しそうな笑顔が、ルールーは好きだった。
 何があっても生き抜いて、全てが終わったら、ティーダとの約束を果たしたいと思った。



 なのに……。





 ティーダはシンと共に消えてしまった。





 ルールーとの約束を果たせずに、彼は消えてしまった。
 ティーダは夢だった。
 ザナルガンドの…夢。
 でも、それがあったから、ルールーたちはティーダに会えた。
 ティーダのおかげで、長い死の螺旋を断ち切ることができた。
 ティーダだけじゃなく、ジェクトもブラスカもアーロンも……。
 無限の可能性をかけて、シンはもう二度と出てこない。


 これからは自分たちの時代が始まる。
 シンのいない世界で生きていくのはきっとなれそうにないかもしれない。
 でも、考える時間はいくらでもあるのだから、今を生きよう。
 それこそが、死んでいった人たちにできる全て……。








 今、ルールーはビサイドにいる。
 浜辺で、地平線を見つめている。
 海と同じ色の瞳をしたティーダの姿を思い出しているのだろう。
 シンと消えてしまったことは認めていても、心の中は穴があいたように寂しさが漂っている。
 それほどまでに、ティーダがいかに大切な存在だったのか改めて思い知らされた。
 けれど、泣けなかった。泣ける場所がないからだ。
 ティーダの胸の中こそが、ルールーの泣く場所……。


 風がふわっと吹かれ、ルールーの髪がゆれていく。
 手で髪を押さえて、ふと後ろの山のほうへ視線を走らせた。
 何かが光ったのが見えた。


「……?」


 ルールーは訝しげに目を細めて一点をじっと見つめてみると、何かが光っている。


(なにかしら?)


 疑問に思いながらも、突然ティーダの言葉が浮かんだ。




『山のほうにね、光るものがあるんだ。とてもきれいなところだよ』




 ルールーはティーダがいっていたことはそのことなのかもしれないと思った。
 すぐに立ち上がって、浜辺を後にして目的地まで走っていく。
 行く途中、服が枝にひっかかって所々破れかかってはいるが、そんなことはお構いなしだった。ただ、ティーダのいっていた事しか頭になかった。


 一時間ほどかかってたどり着いたら、ルールーは光るものを見つけて近づいた。
 それはスフィアだった。
 それも、かなり古いものだった。
 ルールーはスフィアに手を触れると、映像が出てきた。
 ルールーを取り囲むぐらいの美しい映像が出てきた。
 それはシンがまだいなかったときの町だった。そしてすれ違う人々の姿と……空を飛ぶものもあり、その美しさに目を奪われるルールー。
 次に映像が変わったのは、自然に囲まれ見たことのない生き物やそれを共に過ごす人間たち……。生命力があふれる風景だった。
 それは遥かな昔の映像だったのだろう。ルールーはティーダがいっていたことはこれだったのだとわかった。
 しばらく見惚れていたのだろうか…。そろそろ終わりかけていた。その間際に、ティーダの姿が見えた。


 ルールーの瞳が大きく見開かれた。



「ティーダ……?」



 思わずつぶやく。
 ティーダは微かに微笑んでいた。



<これを見つけるのは、きっとルールーだろうな>



 間違いなく、ティーダの声だ。
 ルールーは涙を流していた。これはもしかしたらティーダが残していった記録。
 ルールーがここにくる事を予感して、ティーダの言葉を入れたのかもしれない。



<そして……その時は、俺は多分、この世界にはいない。シンと共にね>



「ティーダ……」



<これ、本当は、ザナルガンド遺跡で見つけたものなんだ。俺はそれが気に入って、ビサイドのこの山に置こうって思ったんだ。何故そんなことをしたのかって?きまっているだろう?ルールーのためだよ>



「あたしの……?」



<ルールーのことだから、俺が突然いなくなったことで哀しみにくれているんじゃないかと思ってさ…。いつでもこれを見て、俺はここにいるよって……。ルールーの心の中にいるよって……。だから、あの約束をしたんだ。覚えている?いや、覚えているからここに来たんだよな。はは…。>



 ティーダの気遣いにルールーは嬉しさとどうしようもない感情に動かされ、嗚咽が漏れた。ティーダはいつだって、ルールーのことを考えてくれた。自分がいなくなった後のルールーのことを思って、こんなことをしてくれたことを……。



<もしも、奇跡が起きるとしたら、真っ先にルールーのところへ帰ってくるよ。その時は一緒になろう。そして、一緒に幸せになろう>



「……ええ……そうね……」



<ルールーの幸せは、俺の幸せだ。愛しているよ。世界中で一番ルールーを愛している>



「ティーダ……あたしも愛しているわ」


 その言葉が通じたかのように、ティーダは微笑んで見せて、映像は消えた。


 いつもの見慣れた風景だった。
 ルールーの足元にスフィアがあった。起動が終わったのだろうか、今は静かに光が消えている。
 ルールーはそれを拾って、元の場所に戻して土の中に埋めた。
 ルールーの顔には涙の後が残っているが、吹っ切れたような表情だった。
 日が沈みかけている地平線を眺めながら、心の中で呟いた。



(ティーダ、愛しているわ。そして、ありがとう……。永遠に、貴方を忘れないわ。本当に奇跡が起こるとしたら、……ううん、信じるわ。いつか必ず帰ってくることを)




 それはルールーの秘められた新たな誓いと、ティーダとの永遠の約束……。







--- Fin ---








後書き・・・・・




エンディングから三ヶ月ぐらい過ぎた後かな?
テーマとはなんだか違うような・・・。ちぐはぐですねぇ・・・。
意見をおまちしています・・・。
では・・・。



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