笑顔






「キラ、キラー!」




 自分の名前を呼びかけられ、後に振り向くとこちらに走ってくるアスランの姿が見えた。


 キラの手前まで走ってきたアスラン。


 かなり走ってきたのだろう。息切れが激しかった。




「アスラン、どうしたの?」




 きょとんとした顔でアスランにたずねるが、息切れを直すためにゆっくりと深呼吸してから口を開いた。




「はぁ、はぁ、どうしたの?じゃないよ。約束したじゃないか。一緒に帰ろうって」




 いわれて思い出したのか、ちょっぴりすまなそうな表情を浮かべて謝るキラ。




「・・・・・・あ、そうだったね。ごめんね」


「いいけど、どうしたんだ?なにかあったのか?」




 生真面目なキラが約束を忘れるなんて、今までなかったのだから、アスランは何かあったのか心配になっていたが・・・。




「ううん、なにもないよ。ただぼーっとしてて、忘れてただけ。本当にごめんね」


「いや・・・・」


 普段なら理由を言うのだが、今回はそれがない。が、あえて深く追求する事をやめた。いずれ話してくれるだろうと 思ったのだろう。






◆ ◇ ◆ ◇ ◆






 二人とも肩を並んで歩いていくうちに、キラが口を開いた。




「ねぇ、アスラン」


「ん?」


「赤ってなんだと思う?」


「赤?」




 突然何を言い出すのだろう?の表情を浮かべるアスランに、キラはかまわずに続けた。




「そう、赤。ほら、物とかあるでしょ?アスランだったらなんだと思うかなって」




 とりあえず、キラの質問に答えるべく両腕を組んで考えるしぐさをしてから答えるアスラン。




「うーん、赤・・・かぁ・・・そうだなぁ・・・・。薔薇・・・かな?」


「薔薇?」




 オウムがえしにいうキラに、さらに追加するアスラン。




「薔薇と・・・桜・・・花のイメージだな」


「ふうん・・・。アスランはそう思い込んでいるんだ」


「キラは?」




 逆にアスランにたずねられ、キラは人差し指を自分の顔に向けた。




「僕?僕はね・・・・」




 脳裏に浮かぶのは、数日前に出逢った紅い髪の男の子の姿・・・・・・。


 そして、その髪が燃えるような炎の色をしたイメージを感じた事を、キラは無意識に口に出した。




「炎・・・・・」


「炎?」




 まさかそんな言葉が出るとは思わなかったのか、驚きの表情を浮かべるアスランに、キラは微笑みながら頷いて続けた。




「うん。とても綺麗で、風に吹かれると、ゆらゆらと揺れているんだ。その強く燃える赤い炎を浮かべるんだ」




 いわれてみればそうだなとアスランは思った。


 だが、同時に炎は少々苦手なアスランだった。




「炎ね・・・・。確かに、赤ってイメージもあるな。けど、俺はいやだな。」




 アスランの言葉を聞いて、キラは頭の上にクエスチョンをいくつか浮かべて訪ねた。



「なんで?」


「だってさ、炎って、良くも悪くも身を滅ぼすってあるじゃないか。火事とか、爆発とかさ・・・・」


「そうだね。生き物を怖がらすのもあるよね。けどね、その炎には・・・・」




 言いかけて、空を見上げる。


 突然言葉が途切れ、空を見上げるキラの様子に、アスランは訝しげに目を細めながら名を呼んだ。




「キラ?」




 呼びかけてもキラは聞こえていないのか、そのまま空を見上げている。




「・・・・・・」




 不安にかかれたアスランはもう一度キラの名を呼んだ。




「キラっ?」




 二度目の呼びかけに、キラはアスランを見て軽く微笑んだ。


 その笑顔に、アスランは顔が赤くなるのを感じた。




「ううん、なんでもない。・・・・・あ、ここでお別れだね」




 道が十字に分かれているが、右がキラの帰る道であり、左はアスランの帰る道だ。


 話している間にいつの間にか分かれ目についたのだろう。


 キラが分かれ道のほうへ足を踏み出すと、アスランがあわてて口を開いた。




「お、おい、何を言いかけたんだよ?」


「んー、秘密」




 口元に人差し指をあてて悪戯っぽく微笑むキラに、アスランはちょっと拗ねた顔を浮かべた。




「ずるいよ。教えてくれよ」


「だーめ。僕だけの秘密。じゃぁ、また明日ね」




 アスランがキラの手をつかもうとするのをさらりとかわしてから、踵を翻して去っていくキラの後姿を見送っていく。


 はっと我に返って、大きな声で呼びかけた。




「キラ!また明日!!」




 アスランの大きな声に、キラは一瞬振り向いて軽く手を上げてそのまま振り返ることなく走り去っていった。


 そんなキラを見送り、アスランはかすかにため息をついて苦笑いを浮かべてから、自分の家に帰るべく反対側の道を 歩いていく。








Fin...
 





後書き----------------------------------------H17.4.1up


 ・・・・・・。
 テーマが違うような気が・・・・・?


 キラとアスランの幼年学生時代ですね。
 8歳ぐらいあたりかな?少なくとも10歳は越えていないあたりを狙っていたんですけど、どうかなぁ?
 え?だめですか?え??わからないって?
 そうですか・・・。としたら、まだまだ修業不足ですね。はぁ・・・(ため息)




 あ、そうそう、赤い髪の男の子はいわなくてもわかるでしょう。
 本編ではありえないし、パラレル物だし、その辺はご勘弁を。
 さて、またお題1つ達成!
 では、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 また次のお話でお会いしましょう。


odai --- novel