図書室






 静かに時計の音が鳴り響いている中で、窓際にいる席に腰を下ろして本を読んでいる少女がいた。


 わずかに窓が開いている隙間から優しいそよ風が入り込み、ストレートヘアーの栗色の長髪がさらさらとなびかせて、頬にふれていた。


 その光景を、遠からず見つめている人たちは思わずため息が出そうなぐらい見とれていた。


 そう、この世のものとは思えないほどの可愛らしげな面立ちに、アメジストの二つの瞳を持つ少女・・・。


 彼女に声をかける男など、いない。


 いや、むしろ声をかけられても、その澄んだアメジストの瞳に見つめられ、何を言えばいいのかわからないぐらいの状況に陥り、結局何もいえずに去っていくのがほとんどだった。


 が、彼女を襲いかかることもあったが、返り討ちにされた。


 その返り討ちにされた男は立ち上がれないほどの大怪我と精神的なダメージを受けてしまい、立ち直れないでいる。


 どうやったらそこまでできるのか、知りたい気もするが、知りたくもない気がするのも確かだったので、その原因は謎のままにされていた・・・・・。


 それがヘリオポリスのガレッジ中に知れ渡っているのも無理はないだろう。




「ここ、いいかな?」




 突然声をかけられ、読書を遮ってしまった彼女はいいところを邪魔されたと思い、ちらっと瞳を向けると、大きく見開かれた。


 そんなに驚く事なのかと思うぐらい、戸惑っている少年に、彼女はわずかに俯いて応えた。




「ど、どうぞ・・・・」




 許可を得て、彼女の目の前に席についた・・・紅い髪に深い蒼の瞳をした少年・・・・フレイが。


 先ほど借りてきたのだろう分厚い本を机の上において、さらにレポート用紙を取り出してペンを片手に持ちながら本をめくっているフレイに、キラは本を読みながらちらちらと盗み見していた。


 ぴたっとめくる手が止まり、フレイはペンを持っている片手の親指と人差し指の一部を口元に触れ、考えるしぐさを見せ、やがて思い立ったのか、レポート用紙に何かを書き始めた。


 何の本を読んでいるのか疑問に思った彼女はそっと本の内容を覗き込んだ。


 彼女の行動に気づいたのか、フレイが顔をあげると、目があった。


 アメジストの瞳と深い蒼の瞳が絡み合い、息をする事も忘れてお互い見詰め合っていた。


 長く感じたのだろうが、実際ではほんの十秒だったが・・・・・。


 我に返った彼女は頬を赤く染めて、頭を下げた。




「ご、ごめんなさい」




 彼女の声を聞いてフレイも我に戻り、




「いや、こちらこそ・・・・。お前・・・・本、好きなのか?」




 気にした風もなく、話を切り出すフレイに、彼女は手に持っている本に視線を向けてすぐに振り返った。




「いえ、ちょっと時間つぶしに・・・・」


「そうか。俺は、フレイ・・・・フレイ・アルスター。君は?」


「あ、僕はキラ・ヤマトです」




 女なのに、僕という言葉を使っているのを気づいたフレイはきょとんとした表情を浮かべた。




「女なのに、僕という言葉を使っているんだな」




 いわれて、彼女・・・キラは首を傾げて見せた。




「そうですか?小さい頃から、そうやって育ててきたんですので、僕っていう言葉がなじみ出てしまって・・・」


「ふうん・・・・」




 あっさりと引き下がるフレイに、キラは分厚い本のほうに視線を走らせて、たずねた。




「あの、それって、宇宙技術の理論の本ですよね?」


「あぁ、テーマに関する資料が、これだから・・・」


「それ、僕もしたことありますよ」


「え?そうなのか?」


「はい。僕、結構得意ですよ」


「なら、参考までに聞いてみようかな」




 フレイとキラはまるで親しい友人であるかのように話を続けていく姿を、離れて見ている人たちは少なからずショックを感じているようだった。


 そんな彼らに、フレイとキラは気づいていないようだった。








 いつの間にか、周りの人がいなくなり、辺りが薄暗くなったのを気づいたフレイは、本とレポート用紙を片付けた。




「すっかり遅くなってしまったな。キラの家はどこなんだ?」


「あ、西地区の36番地方面です」


「西地区か。俺のせいで遅くなってしまったんだ。送ってやるよ」


「え?あ、あの、大丈夫ですよ。僕一人でも帰れますから」


「女一人で帰すのを見過ごすほど俺は馬鹿じゃない。いいから送ってやる」




 フレイの厚意に感謝しながらも、キラは申し訳なさそうに頭を下げた。




「ごめんなさい。お言葉に甘えて・・・・・・」


「んじゃ、出るぞ」




 すでに片付け終えたのだろう。本とレポート用紙はいつの間にか、紐でくくられており、肩に担ぐフレイ。


 それにつられて、キラも読んでいた本を鞄の中に入れておいて、そのまま図書室を後にした。








続く...?
 





後書き----------------------------------------H17.4.8up


 【フレイ男性化好きな人のための40のお題】【2.キラ】の続き・・・・・・のつもり(汗)
 けど、前回のあとがきの通りになれなかった・・・・・。
 その点はちょっとショックかな・・・・?(泣)


 ま、それはともかく・・・・・いつの間に学園ストーリーに!?
 一応、本編の前のつもりなんだが・・・・。これじゃ、パラレル本編ストーリーになるな。
 いや、最初の目的はそのつもりなんだが、ちょっとずれてきたような・・・・。


 まぁ、深く考えないでおこう。後先がこじれてしまうかもしれないが、そのときはそのときでいいかっ!


 さてと、最後まで読んでくれてありがとうございます。


 また次の話で逢いましょう!!


odai --- novel