桜の木







 ゆっくりと家の中のリビングでくつろいでいる二人がいた。


 ソファに座って雑誌を読んでいるフレイと、その隣でテレビを眺めているキラの姿がいた。


 キラが突然フレイの肩に顔をのせると、フレイは気にした風もなく、自然と受け止めていた。


 雑誌からキラのほうに向けて、声をかけた。




「キラ、どうした?」




 フレイに声をかけられて、キラは小さく首を振った。そして、フレイの肩から頭を離れてよりいっそう抱きつくように身をよせていった。




「ううん、ねぇ、桜を見たことある?」


「桜・・・?あぁ、写真でなら見たことあるが、生は見たことないな」


「そっか、すごく綺麗だよね?」




 フレイに寄りそっているキラの顔が近づいてくるのを感じて、心臓がこれでもかっていうぐらいどきどきしていた。




「あ、あぁ、綺麗だな」


「でしょ、・・・で、私ね、前はコペルニクスにいたって話したよね?」




 フレイが頷くのを見て、キラは遠くを見るように上を見上げた。




「あそこにね、すっごく綺麗な、一本の桜があるの。とっても大きくて、桜吹雪がすっごく魅力的なの」


「へぇ」




 フレイが興味津々にキラの話に耳を傾けていた。




「あの木はね、言い伝えがあるの」


「言い伝え?」




 オウム返しに呟くフレイに頷くキラ。




「うん。御伽噺だけど、あの桜の木の下に、人間の血を吸う妖精が住んでいるって言われているの」


「人間の血を?」


「そう。悲しみに包まれた人間が、そこで命を落とすと、桜の妖精が現れてその人間の血と魂を吸い取るの。そうしたらね、桜の花の色が澄んだ赤色に変わるんだって。とてもこの世とは思えないほどの綺麗な色の桜になるって言われているの」


「こわいな」


「うん。こわいね。でね、もう一つあるの。桜の妖精に気に入られた人は、その血と魂を取る事はなく、新たな来世として生まれ変わる事を約束されるって」


「なら、気に入られるのはキラかもしれないな」


「なんで?」




 首をかしげて問いかけるキラのしぐさに、なんともかわいく感じられ、フレイは抱きしめたい衝動に抑えながら続けた。




「俺にとって大切な女だからさ」


「なっ////」




 フレイの言葉に、キラは一瞬で耳まで真っ赤になっていた。


 それを知ってか、得意そうな表情から拗ねたような表情に変わりつつ、話を続けた。




「・・・でも、いやだな。キラは桜の妖精なんかやらないな」


「え・・・?」




 真っ赤なキラがすぐに普通の色に落ち着いていく。




「キラは俺のものだ。キラの心も、身体も、全て俺のものだ。死神であろうと、桜の妖精であろうと、俺のキラを誰にもやるもんか」




 ここまでストレートに言われると、またまたキラはこれでもかっていうぐらい耳まで真っ赤になっていた。


 そんなキラの可愛らしさに、フレイは愛しく感じて、ぎゅうっとキラを抱きしめた。




「キラ、好きだ。大好きだ」


「・・・・うん。私も・・・・フレイが大好き」




 キラの腕がフレイの背中に回されて抱きしめあう。




「キラ」




 フレイに呼ばれて顔をあげるキラは、フレイの見つめる瞳の奥底に潜めているものを見た。


 フレイの顔が近づいてくるのを感じて、キラはゆっくりとまぶたを閉じられ、柔らかいものが唇に触れた。


 やさしく、ついばむようなキスを受けるキラは、これ以上のない幸せをかみ締めて、ぎゅっと、フレイの背中の服にしがみついていた。


 そして、やさしいキスから激しいキスに変わるのは、そう長くはなかった。


 二人が互いの身体を求め合うのはそれからまもなくのこと・・・・・。
















































「うぅ・・・・・。ばかぁ、フレイのばかぁ・・・・」




 恨み声でフレイに訴えるキラに、フレイは困った表情を浮かべてキラをあやすように背中をなぞっていく。


 まだ余韻が残っているのか、キラの甘い声が漏れた。




「あん、もう、やめてってば!もう何回もしたら壊れちゃうよ・・・・・・!」




 どこか甘い声が聞こえるのは気のせいではないだろう。背中を撫でるのをやめて柔らかな栗色の髪を撫でていた。


 そのしぐさが、キラには気持ちがよさそうにフレイの胸に頬を寄せた。




「なぁ、キラ」


「んー?」




 フレイに撫でられるのが気持ちいいのか、うっとりとした表情で目をつぶるキラに、フレイは吹き飛ばされそうになる理性を何とか抑えていた。




「いつか、コペルニクスに行こう?」




 突然の言葉に、キラは目を開けてフレイを見上げた。


 ぶっきらぼうな照れくさそうな表情を浮かべて話を続けた。




「さっきキラが話した桜の木を見に行こう。俺も見てみたい」


「ほんと?」


「あぁ。それで、こういってやる。キラは俺のものだって」


「もぅ!・・・・・でも、フレイも私のものよ?」




 普段恥ずかしいセリフを言わないキラに、フレイは内心驚きつつも、嬉しそうに微笑んでキラの頬に両手を挟んで見詰めあった。




「もちろんだ。俺の心も身体もキラのものだ。それと同時に・・・・」




 続きの言葉を、キラが口を開いた。




「私の心も身体もフレイのものよ。大好き!」




 キラの両腕がフレイの首に回され、キラを抱きしめるフレイ。




 お互いに笑いあい、幸せそうに抱きしめあう二人・・・・・・。








 そんな二人の幸せなひとコマ・・・・。








Fin...
 





後書き(反転)
H18.5.12up



 うぅ、なんですかっ!これは!!
 穴があったら入りたいぐらいです!


 フレキラですね。うう、恋人同士なんです。
 なんていうか、これ、ほのぼのといった感じかな。


 しかし、後半はちょっと弱いな。
 でも、これぐらいだったらまだいいでしょう。


 さてと、最後まで読んでくれてありがとうございます。


 また次の話で逢いましょう!!


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