第六話 ライディヴ
ライディヴの放とうとしている魔法に気づいたポップは次なる攻撃に備えるために対策を考えはじめていた。 (どうする?あいつはこの者とは違った特殊な魔法を使いやがる。風に立ち向かうとしたら・・・・・炎か、氷の魔法か) ぎゅっとブラックロッドを右手から左手に持ち替え、炎の魔法を唱えた。 【メラ!!】 ポップの手のひらから小さな火の玉を生み出し、ライディヴにめがけて放った。 ライディヴは馬鹿にした顔を浮かべて片手で火の玉を受け止めた。 「こんなちっぽけな魔法で倒せると思っているのか」 「思っちゃいねぇよ」 先ほどとは違った二倍以上の爆裂呪文が生まれようとしていた。 ポップの作戦に気づいたライディヴは次なる呪文を唱えた。 【闇神の名において命ずる 暗き闇よ 真刃よ 風裂破(ウィブレズ)!!】 【メラミ!!!】 ライディヴの呪文詠唱終了と同時に、ポップから3つの火の玉が放たれ、互いの魔法がぶつかりあう。 鋭い風の月の形をした刃が無数に火の玉を切った部分がわかれ、一部に爆風が起こった。 「くっ・・・・・・」 ライディヴの声が小さく漏れていた。 互いの魔法がぶつかったところで起こった爆風の煙が生まれ、目の前にいるはずのポップたちの姿を一瞬だが、覆い隠されていた。 その隙を狙ったかのように、煙の向こうから黒いものが出てくるのが見えた。 (―――まさかっ!) 脳裏に浮かんだ考えを肯定する前に、ポップの姿がライディヴの目の前に現れ、ブラックロッドを突きだした。 そのブラックロッドの先に魔法の光が集められ、反撃する暇を与えず、発動した。 【メラゾーマ!!】 先ほどの二つの魔法とは比べ物にならないほどの巨大な炎の玉が、ライディヴの至近距離にて発せられた。 モロに受けてしまったライディヴは後へと押し飛ばされてしまった。壁に突き当たれ、瓦礫にうずもれていく。 まだ気の抜かないポップは、ライディヴが飛ばされたところから視線をそらすことはせず、息を整えるために深呼吸をしていた。 動く気配も感じられず、倒したかと思い、大きく息を吐いた。 「はぁ、はぁ・・・・な、なんとか倒したかな・・・・?」 「ポップ殿・・・・!!」 ブリズの呼ぶ声に振り向いたポップは、ブリズの目が自分に向けておらず、見当違いのほうへ向けながら驚愕の表情を浮かべていた。 なにをそんなに驚いているのか、考えるまでもなかった。 先ほどライディヴが瓦礫に埋もれた場所のほうから、くずれてくる音が響いたからだ。 ゆっくりと確かめるように再び瓦礫のほうへ視線を向けた。 「まじかよ・・・・」 たらりと、冷や汗を流しながら呻くように呟くポップの視線の先には、瓦礫から手がのびだされ、ガラガラと瓦礫がくずれていた。 その中から、埋もれていたライディヴがゆっくりと立ち上がった。 どこも怪我がなく、服がところどころ破れていたのをみると、「あー、もったいねぇなぁ」とでもいいたげな表情を浮かべながら、バンバンと体中に埃を落とすしぐさを見せて、こりこりと軽く身体をならしていた。 「なんて、こったい・・・あの魔法を受けても、かすり傷一つないって言うのか・・・!?」 信じられなかった。最後を放った魔法は、ポップの渾身の力をかけてはなったのだ。 それが、どうだ? 平然と立っているライディヴの姿に、とんでもない相手だと今更ながら思い知らされてしまったポップ。 「すこしばかり、ちょっとあせったな。こりゃ、久々に本気にならないといけないかな」 軽口をたたくライディヴ。 そんなライディヴをよそに、ポップは思った。 (こんなに長引く戦いをするのは、バーンとの戦い以来だったな・・・・・。これは桁違いの違う長い戦いになりそうだ・・・) 口の中で舌をまくポップは、次なる攻撃に備え、構えを取りながら対策に考えをめぐらしていく。 考えていくにつれて、ライディヴの右手が胸の前に出して、人差し指の先に小さな白光が浮かび上がり、目の前で何かを描き始めた。 魔法の文字らしきものが浮かびあがっていきながら、呪文を詠唱し始めた。 【空神よ 風神よ 龍の・・・・・】
――― そこまでにしとけ、ライディヴ ―――
ライディヴの呪文詠唱を遮った声が響いた。 ポップとブリズは空を仰ぎ、周りを見回した。 最初のライディヴとはちがって、姿が見えなかった。 「いいところを邪魔するな。フェイル。」 不機嫌な声を出すライディヴに、フェイルと呼ばれる者の声が響いた。
――― そう、不機嫌になるな。一つの使命は終えたところで時間稼ぎは終わりだ。 ―――
「だったら、少しぐらい時間くれたっていいだろう」
――― 我が主の命令だ。 ―――
舌打ちをしたライディヴはしぶしぶそうな表情を浮かべて、さっきまで呪文が描かれていた文字が消えた。 「ちっ、我が主の命とあっては従わないわけにはいかないな。仕方ない」 愚痴をこぼすライディヴは、ポップたちに向けた。 「次に会った時は、命をもらうぞ。ポップ」 ライディヴの身体が薄れていくのを黙ってみているポップたち。 「あぁ、そうだ、一ついい忘れてた事があった」 まるでそれが目的だったように、次の言葉を付け加えたが、それがポップたちに衝撃を受ける事になる。 「ロモス国は堕ちた。ぜいぜいあがいてみる事だな」 ポップが問いかけるまもなく、最初からいなかったかのように、ライディヴの姿が消えていった。 後に残ったのは、ひざをおろしたポップとブリズ、そして意識を失っているメルル・・・・・。 彼らが再び起こすのは、それから半刻後だった・・・・・。 後書き・・・(反転) H17.6.12up とりあえず終わった・・・・。 後編はちょっと前編より少々長いかな。 ところで、魔法の呪文の事ですが、ちょっと他の呪文をちょぴっと頂いて、作ったやつです。 でも、やっぱり適当なやつかもしれない。 ま、その辺は目をつぶってくださいっ・・・・。 さて、リックス神殿での戦いが終わり、次は・・・・どうなるかな。 最後まで読んで下さってありがとうございます。 ご意見、ご指摘いただけると嬉しいです。 では、次の話で逢いましょう。 |