予 感
--- 1 --- リュックは夢を見ていた。 太陽もなく、ただ幾つかの街の光と数ある星空が街の光と混合しているような不思議な風景と、まったく知らない建物や船と数え切れない人々の姿・・・。 自分の世界とは筋違いの別世界だった。 これは、夢だ・・・。 だって、こんなの見たことないもの・・・・。 数ある船の港のひとつに人だかりが集まっている姿をみつけた。 リュックは引き寄せられるように飛んでいく。 その時になって、自分は走っているのではなく、飛んでいるのだと気づいた。 誰もリュックの姿を見ようとしない。 見えていないのだろう。 夜光にあてられ、海の風が金色の髪をなびかせている青い瞳の少年が立っていた。 年は・・リュックと同じぐらいだろうか・・・。 金髪の少年はサインをせがまれているであろう、8〜10歳の3人の少年に囲まれている。 笑顔を見せながら青と白の描かれているブリッツボールに、サインを次々と書きつづっていた。 少年達のサインが終わり、金髪の少年に近い赤い少女と黒髪の少女がおずおずとサインを頼まれているところだった。 金髪の少年がサインを終えたブリッツボールを赤い少女に返しながら声をかける。 だが、彼らの声がリュックにはわからなかった。 言葉にならない、意味不明の音としか聞こえなかった。 明るく笑っている金髪の少年を、リュックはなんていい表情をする人だなぁと思った。 そして、3人の少年がブリッツボールを足元において、振りかぶった両手を胸の前に持っていき、玉の形をあらわすように上下の手のひらを向かい合わせて、静かに一礼した。 そのしぐさを見て、リュックは驚いた。 なぜなら、そのしぐさはリュックの世界で祈りの動作と同じだったからだ。 ここにきてまで、そのしぐさを見るとは思わなかったのだろうが、少々複雑な心境になったが、ふとあることに気づく。 これは夢だから似てもおかしくない。 そうと切り替えると、あとはそのまま成り行きを見ていこうとリュックは思った。 金髪の少年は彼らたちに見送られ、どこかへ向かって走っていく。 リュックは何故かわからないが、金髪の少年の後を追っていこうと思った。 その時、誰かの視線を感じたリュックは振り向いた。 さっきの3人の少年とはちがって、深い蒼のフード付で腕の肌を出している少年がリュックを見上げていた。 微妙に驚いている色が読み取れる蒼い少年を、リュックは自分が見えるのかと思った。 『君は・・・・・そうか、迷い込んできたんだね・・・・・それとも・・・・・・』 蒼い少年の言葉は声こそ意味不明しか聞こえないが、それでも意味はリュックの頭の中に流れていた。 「あたしが見えるの!?」 他の人たちは見えなかったのに、この蒼い少年だけは見えたのだと気づいて思わず声を大きくして言った。 リュックの言葉を認める意味として、小さく頷く蒼い少年。 リュックの姿が見える蒼い少年に、さっそく疑問をぶつけた。 「じゃあ、ここは、どこなん?」 返ってきた答えは、リュックにとって信じられない衝撃のものだった。 『ここは、ザナルカンド・・・・眠らない街・ザナルカンドだよ』 「え・・・・・?」 蒼い少年の返ってきた答えを理解するのに時間がかかってしまったリュック。 『ザナルカンド・・・・・ザナルカンドだって!?ここが!?』 夢の中とは信じられない顔で周りを見回しているリュックに、蒼い少年はなにを思ったのだろう・・・・。 『信じるか、信じないかは、キミの判断に任せるよ』 蒼い少年の声とは思えないほど、長く生きてきた者の穏やかな深みのある声に、リュックは我に返って蒼い少年を見下ろしていた。 この子は一体・・・・・? リュックが何も言わないでいると、蒼い少年が再び口を開いた。 『・・・・・・もうすぐ、この世界は滅びる。ううん、再び同じ事が繰り返す・・・・そんな世界に・・・・・・』 突然なにを言い出すのだろうとリュックは思った。 蒼い少年はかまわずに続けた。 『あまり多くは語られないけれど、キミが何故この世界に現れたのか、僕自身にもわからない』 首を振りながら話す蒼い少年に、リュックは黙って聞いているだけだった。 『・・・・・・でも、もしかしたら・・・・・・』 最後の言葉は聞き取れないほどの小さな呟きだった。 「キミは・・・・あたしがどこから来たのか、知っているの?」 疑問に思ったことをたずねてみると、蒼い少年は頷いた。 『うん、知っているよ。この世界ではなく、もっと遠くの世界から精神だけやって来たことも・・・・』 知っているのなら、どうやって帰ればいいのだろうかと考えていた時、蒼い少年の声が頭の中に響いた。 『大丈夫だよ。もうすぐ全ての物語の終わりが近づき、新たな物語が始まるときに、自分の世界に帰れるよ。』 意味深な言葉を聞いて、リュックは再び思考の世界に落ちようとした。 『それよりも、ほら、あそこに向かったらいいよ。あの子が走っている』 あの子とは、サインをした金髪の少年の事を言っているのだろう。 何故、この少年の言った事を聞かなければならないのかわからないが、とりあえずはここにいることよりも従ったほうがあとから何かがわかるかもしれないだろうと思った。 そうと決まれば、リュックは蒼い少年に微笑んで見せて頷いた。そのまま踵をかえしていこうとしたが、何かを思い立ったのか、蒼い少年に振り向いて言った。 「ありがとう。あたしはリュックだよ。キミの名前は?」 名前を聞かれるとは思ってもいなかった蒼い少年は、わずかながら戸惑いの表情を浮かべたが、それも一瞬の事だった。 『僕は・・・・・・』
続く...
後書き(反転) H17.4.9up
あぁっ、途中で途切れてしまった・・・・・。 いや、長くなりそうなんで、とりあえずここら辺で区切りつけようと・・・・。 さて、これは・・・・・リュックサイドのパラレル本編ストーリーかな。 夢にいたティーダが現実に現れ、夢の出来事を知っているリュックがどのような行動に出るのか、ちょっと作ってみたくて・・・。 いかがでした?といっても、まだ序の口ですけど、そこまでになるのはもうちょい先かな・・・? また途中から本編どおりになってしまうかもしれないけど、とりあえずかいてみようかな・・・・。 では、また次の話でお会いしましょう。 ご意見、ご感想、ご指摘をいただけるとありがたいです・・・・。 |