--- 2 --- 蒼い少年と別れたリュックが金髪の少年に追いつくまで、そんなに時間はかからず、案外と簡単だった。 走っていたら、障害物に邪魔されていただろうが、今のリュックには飛んでいるだけだったので、問題はなかった。 走っていく金髪の少年が突然止まって左側の建物の広告看板のほうへ振り仰いだ。 その視線をリュックも追うように振り仰ぐと、肩より少し長めの黒髪に赤いバンダナを頭に巻いて、いかにも歴戦といった風格を漂わせ、腕を組んでいる人物の広告看板が大きく飾っていた。 リュックは金髪の少年をもう一度振り向くと、なんというか、怒りに任せられ、反発しそうな鋭い瞳で、広告看板にうつっている人物を睨んでいた。 金髪の少年が口を動かしたとたん、頭の中に一つの言葉が伝わってきた。 『・・・・くそ親父』 それっきり言葉に出すことなく、再び走り出す金髪の少年に、リュックは考えた。 今のは・・・・あの少年の言葉・・・? いや、それよりも、くそ親父っていってなかった? あの人が・・・・・? 似ても似つかないけど、どこか似ている・・・・・・? なんだろう・・・・・・。 そこまで考えながら、はっと我に返った時はすでに金髪の少年が見えなくなったところだった。 あ―――。しまったぁ。 見失っちゃったよ。 頭をかきむしるリュックはとりあえず金髪の少年が向かった先をたどりながら飛んでいった。 その道沿いでいたるところで談話を交わす人たちがいた。 その服装はやはり、リュックにとって見たことのない服装だった。・・・が、どこか顔が似ている人が多いのは気のせいだろうか。 歓声が向こうからここまで響くのを感じたリュックは目の前の向こうを見て大きく見開かれた。 ルカ=スタジアム!? それはブリッツボールのスタジアムであり、タイプが違えども、あまりにも似ていると思った。 入り口の傍らに、ブリッツボールのシンボルとでもいうのだろうか、棒を片手にポーズを決める二人の彫像が向かいあうようにたっていた。 見上げると、人間の数倍はあるであろう、それほどまでに大きかった。 リュックはこの不思議な夢をもっと見てみたいと好奇心に駆られ、ブリッツボールスタジアムの観客席のところへ飛んでいく。 誰もリュックの姿を見ていない。それが幸いというのだろうか。 観客席の一番前に飛んでいるリュックは、圧倒するほどの歓声に耳をふさぎながら周りを見回した。 リュックの世界と夢の世界ではこうも違うなぁと思った。 突然、誰かの名前を呼んでいる事に気づいたリュックはスタジアム中心より外れた場所に、金髪の少年がブリッツボールを片手に添えて、もう一つの片手を挙げて応えた。 『ティーダ!ティーダ!!』 ティーダ・・・・それが、金髪の少年の名前なのだろうか。 観客席を見回す金髪の少年・・・ティーダは、目の前にある中心を見据えた。 スタジアムの中心に、青白いプラズマがいくつか生まれて集まっていくと小さな青白い蛍光の玉が膨らんでいき、一瞬圧縮されたかと思ったら、すぐにその光がスタジアム全体に放たれ、その衝撃の風が、ティーダたちに降りかかった。 その後、水がどんどんと溢れ出して、ブリッツボールの試合ができるほどの巨大な玉の《プール》が誕生した。 《プール》の技術のすごさに、リュックは声を出す事も忘れて魅入ってしまっていた。 ティーダを率いるチームと対戦するチームが《プール》に入り、ブリッツボールの試合が始まった。 白熱した中で、リュックは我を忘れるほど激しい試合に興奮が高まり、ティーダにエールを送った。 ティーダがものすごい選手だとこの試合を見ていてわかったリュックは、自分がこの夢の中にいることも忘れて、エールを送る事だけしていた。 ブリッツボールが《プール》から真上へ飛び出して、そのボールを追うティーダ。 歓声がいっそう大きくなった。 リュックはティーダがシュートを放つのだと気づき、どんなシュートを打つのかを期待しながら見つめていた。 《プール》から飛び出したティーダはくるりと身体を回転し、足を上げさせてボールをゴールへ向かうためにシュートを放とうとしていた。 その時、だった――――――。 ドガァァァァァァンッ!!! スタジアムの向こうからいくつかの閃光が放たれ、凄まじい爆撃が聞こえたと同時に、いたるところに直撃された。 な、なんなの!? 何が起こったのか、一瞬頭の中で思考が止まったが、直撃されたところから瓦礫がくずれた音と、逃げまどう人たちの悲鳴がリュックの耳にはいって我に返った。 周りを見回すと、子供をつれて逃げる者、人を押しのけて逃げる者、転んで起き上がろうとする者・・・・・の姿が見られ、先ほどの衝撃で崩れたのだろう、瓦礫がくずれていた。 リュックはなにが起こったのか、その原因を突き止めるためにスタジアムの上へ飛んでいく。 その途中で、《プール》の一部であろう、金属の端に、手でつかんでぶら下がっているティーダの姿が目に入った。 ティーダ! リュックが叫ぶと、ティーダは必死に手でつかんでいながら誰かに呼ばれた気がして、辺りを見回した。 そのとき、再び衝撃が襲われ、ずるりと手が滑って下へ落ちていく。 ティーダ!! 落ちていく瞬間、彼の名を呼ぶ声が聞こえたのか、リュックの方に目を向けた。 海のように澄んだ青色の瞳と、渦巻き模様の緑色の瞳が、ぱちりと目が合った。 一瞬だった・・・・・・。 ティーダが落ちていく様子を遮る光の物が通り過ぎた。 リュックは思わずスタジアムの外の向こうに目を向けると、その何かを見たとたんに、その瞳が大きく見開かれた。 それはリュックにとって見知った存在だった。ある言葉を発することなく、再び放たれた閃光がリュックに迫られようとしていた。 リュックは条件反射で顔を両腕でふさぎ、閃光に包まれるのを感じた。
続く...
後書き(反転) H17.4.17up またまた途中で途切れてしまった・・・・・。 しかも、中途半端・・・・・。 すみませんっっ。 蒼い少年の名前は・・・・とりあえず勝手に決めておきますが、その名前が出るのはいつになるのかわからないけど、もしかしたら出ないかもしれない。 ま、気にしないで・・・・・。っと、スタジアムの状況の表現って難しいな。 しかも、ゲームにないセリフまで出てしまっているし、はははは、ちょっと本編と違っているな。 では、また次の話でお会いしましょう。 ご意見、ご感想、ご指摘をいただけるとありがたいです・・・・。 |