出逢い



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『よしっ、終わったぞ』




 爆弾の仕掛けを付け終えた男がいうと、集まっていたリュックたちはすぐに巻き添えをくらまないように離れて、壁の中に隠れた。




 隠れたと同時に凄まじい爆弾の音が起こった。


 爆風が起こり、すぐに奥のほうへと走りこませたリュックたち。


 煙の向こうに、昆虫類の鋭い長い手足が地についている魔物・・・・クリックと対面している少年の姿が見えた。








 ドクンッ!







 心臓の音が大きくはねた気がした。


 薄暗いけれど、リュックには信じられない場面に、声を出す事も動き出す事もできなかった。


 そう、リュックは彼を知っている。


 なぜなら、さっきまで夢で見た同じ少年だったのだから・・・・・。






『リュック?』




 傍らに構えを取っている男に呼ばれ、我に返ったリュックは右手を横に出して金髪の少年のところまで歩き出した。


 手出しをするなということだろう。


 男たちはリュックの指示に従い、この場を動かなかった。










「味方?助かるッス!」




 金髪の少年がほっとした声で言われ、リュックは何も言わずに構えを取り、目の前にいる魔物・・・クリックを見据えていた。


 金髪の少年の攻撃は素人並みだが、それなりに筋は通っているとリュックは思いながら手榴弾を取り出してクリックに投げた。


 何回かの攻撃でようやくクリックを倒し、金髪の少年はリュックに振り向いた。




「助かったよ!ありがとう!」




 はにかんだ笑顔を見せる金髪の少年に、リュックは内心動揺していた。




「ん・・・・・?あんた・・・・・」




 金髪の少年が訝しげにリュックの顔を覗き込んだ。




 その時、リュックの後にいた男たちが銃口を金髪の少年に向けた。


 突然、銃をつけられ、金髪の少年がびっくりした表情を浮かべたが、すぐに怒りをむきだしにしてにらんだ。




「何すんだよ!」




『こいつ、何者だ?』


『魔物だ!人間にばけてるんだ』


『そうだ!そうにきまってる!』


『やっちまうか?』




 銃の引き金を引こうとする男の腕に手を置いて、リュックが声をかけた。




『待って!』


『リュック?』




 止められたリュックに男はなにを言っているんだといわんばかりの表情を浮かべていた。




『船に連れて行く』




 リュックの言葉に他の男たちは動揺したそぶりを見せた。




『正気か!?』


『あたしはいつだって正気よ。落ち着きなさい』




 冷静な声で答えるリュックに逆らえる事もなく、しぶしぶ仕方なさそうに銃をおろし、舌打ちする音が微妙に耳に残った。




『チッ・・・・』




 なにがなんだかわからない金髪の少年は、リュックのほうを見ていた。


 リュックはその視線を受け止める事もせず、ゆっくりと金髪の少年に身体を寄せて、耳元で小さく呟いた。




『ごめん』




 謝罪の言葉と同時に、金髪の少年の腹部に拳を放ち、身体がくずおれていく。


 意識を失っている金髪の少年に視線を向けて、船に連れて行くよう男たちに指示を与え、来た道を戻っていく。










◆ ◇ ◆ ◇ ◆








 ブリッジの席についているリュックに、アニキが少々眉をひそめながら口を開いた。




『リュック、見ず知らずの少年を連れてきたと聞いたが、どういうことだ?』


『こいつらが魔物だといいだすからだろ。あいつは、魔物じゃない。』




 反対側に立っている男たちに顎でしゃくりながら答えるリュック。


 間を空けずに答えるリュックに疑問を感じたアニキが腕を組みながら尋ねた。




『何故、そういいきれるんだ?』




 疑問を感じるのも無理はないが、「はい、夢で見たから」とでも言ったら反対させられるだろうし、頭おかしいといわれるのもありだし、とりあえず・・・・・・間をおいて答えるリュック。




『・・・・・カン』




 リュックの答えに唖然とするアニキは一瞬その答えを理解するのが遅れた。




『・・・・カン?カンだけで決めるなよ。リュック』




 アニキの呆れた声に、リュックは半分睨んだ。




『なんだよ。アニキ、あたしのカンが信じられないって?』


『誰もそんな事いってないだろ』


『そんなことよりも、あいつを海の遺跡に連れていく。あいつ、多分水の中でも行けるタイプだよ』


『なんでそんな事がわかるんだよ!・・・・・・・まぁ、ほっとくよりも働かずべからずってやつだな。いいだろ。リュックの案にのってやる』




 あっさりとリュックの案に乗るアニキに、ダグが


『アニキ、正気かよ!?』


『うるせぇよ。ダグ。文句あるなら、お前がリュックに言え』




 アニキに胡散臭そうにいわれ、ぐっと言葉に詰まるダグ。


 リュックに視線を向けたが、諦めたかのようにため息を吐いた。


 自分がリュックに口でかなうわけないとわかっていた。


 アニキは組んでいた腕をほどいて、舵を握る男に指示を与えて船を走らせていく。


 そんな彼らを後にして、彼がいるであろう甲板へ向かっていくが、ダグの呼び止める声に従わずに、出て行っていく。


 リュックが出て行ってから、ダグの舌打ちする音が漏れた。


 面白くないのだろう。


 ダグの苛立ちの様子に、アニキは肩をすくめてほっとくことにした。


 そんなことはダグの問題だし、関わるのはごめんだと思ったからだ。








続く...
 





後書き
H17.6.18up



 お待たせいたしました。
 第壱章の始まりです。


 リュックとティーダとの本当の意味での出逢いまでのお話です。


 ・・・・・何もいう事ありません。


 では、次の話の予定は・・・・・未定ですが、またお会いしましょう。


 ご意見、ご感想、ご指摘をいただけるとありがたいです・・・・。


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