序章
―序章―





 ある森の中で、激しい戦いがあったかのような跡があった。


 木の枝がいくつか折れ、木々がところどころ倒れており、無残に切り刻められて息絶えた生き物までもいた。


 その地の中心に、一人の少年と腕に抱かれている女性がいた。


 二人とも服が破れかけ、血が染み出している。


 少年の右肩にはえぐり削られた傷が痛々しく見られた。


 女性の傷は少年よりもひどく負っており、血が止まることなく、無常に流し続けている。




 もうすぐ命が尽きようとしている女性が、悲しみの表情を浮かべている少年を見つめていた。




 女性は震える手で、少年の頬に触れた。
 その手を優しく包み込む少年の手・・・。






「・・・・・・・・・」






 女性が何かを語りかけ、少年は頷いた。




 少年の瞳の中を見据えた女性は安心したかのように、微笑んで瞳を閉じた。
 少年の頬に触れていた手が、するりと少年の手から滑り落ちた。




 腕の中の女性の重みが増したことに気づき、少年は声を出す事はなく、あとからあとから涙があふれて、女性を抱きしめていた。




 少年の哀しみに同情したかのように、ボツボツと雨が降ってきた。
 瞬く間に、激しい雨が二人に降り注いでいる。




 雨にぬれていながらも、しばらくの間、少年は息絶えた女性を抱きしめたまま、この場を動かなかった。












あとがき・・・


FF4の長編始まりです。


これは本来ゲーム内容とは少し違った意味で考えました。


キャラクターは同じですが、人物の成り行きは・・・まぁ、違う方向で進んでいってみようかなと思いまして・・・。


本編はいつになるかわかりませんが、気長に待ってくださると嬉しいです。


H15.6.22 麓樹