第肆話 レオナ女王 (2)パプニカ城の王の間で、玉座に座っているレオナは、慎重な表情をしながらひざまずいている兵士を見つめていた。 「・・・・・・敵は?」 「わかりません・・・・が、数え切れないほどの大軍でした・・・・・。生き残ったのはわずかのみだと・・・・」 「ロモス国王と、ライラ姫は?」 「わが親衛騎士隊長キーファ様が御二人様をお守りしていたのですが、脱出する時にはぐれてしまったので、わかりません・・・・・」 「そう、キーファ殿が一緒なら、必ず無事でいるでしょう」 「はい」 「しかし・・・何故、魔物が再び人を襲うなんて・・・・」 「大魔王バーンは倒したはず。それなら、何故・・・・」 一瞬、在る者の事を思い出したが、封印がとかれる事など決してありえないと思ったのか、すぐにその疑念を振り払った。 「・・・敵は、どんなものだったのです?」 「それが・・・みた事もない、魔物・・・・いえ、魔物というよりも、人間系と魔物を混ぜたような・・・・キメイラまがいのもののようでした」 キメイラという言葉を聞いて、息を呑んだ者があちこちから漏れていた。 キメイラ・・・・。 それは、合成獣とも呼ばれ、二つ以上の生き物を融合した存在であり、凶暴な性格を持ちながら鋭い牙と爪で切り刻み、炎と氷の魔法を操る事ができる厄介な魔獣で、一度あったら最後とまで言われるほどの恐ろしい生物である。 そのキメイラまがいものであるとしたら、大魔王バーンが存在していた頃とは違った意味できつい問題になりそうだと、レオナは思った。 「レオナ様、こちらもいつでも迎え撃つよう準備をしておかなければ」 大臣が進言するが、レオナは首を振った。 「レオナ様!?」 片手を挙げて大臣の口を閉じるよう合図を送り、しぶしぶ引き下がった。 「誤解しないで。国民に不安を与えてしまっては混乱を招く恐れがあるでしょう。そうなってしまっては、敵の思う壺よ」 言われて気づく大臣に、レオナはさらに続けた。 「私達がすべき事は、全世界に厳密に連絡をとり、国民に不安を与えないように影で警戒強化を務めるよう、伝えておきなさい。そして、その敵の目的と正体を突き止めなければならないためには、情報が必要よ。どんな小さなことでもいい。それを調べて、報告するように」 「承知いたしました」 一礼をしたかと思うと、大臣が兵士に向かってレオナの言ったことを実行するよう促していた。 大臣が出て行き、レオナはひざを下ろしているロモス国の兵士に目を向けた。 「ピピンといいましたね。今夜はゆっくりと身体を癒すように。全快になり次第、一時的にわが軍に身を預けておくといいでしょう」 「お言葉はありがたいのですが、一刻もはやく殿下と姫様を探し出さなければ!」 予想通りの言葉が返ってきたが、レオナが軽く手を上げて、静かにピピンを見下ろして口を開いた。 「ピピンの気持ちはわかります。だけど、一人で探すのにロモス国は広すぎるでしょう。我が軍の一部を任せてもいいのでしょうが、ロモス国が堕ちてしまった地にもどったら、敵の罠が待ち受けているかもしれない。それに、敵の目的がわからないままで、次はどの国を狙うかははっきりとわからないわ」 ピピンはパプニカ国の軍を借りてまで探したい気持ちはあるが、レオナのいうとおり、罠が仕掛けているかもしれないし、敵が待ち受けているかもしれない。そうなると、致命傷を受けてしまうのはパプニカ国だ。それは避けたほうが良策だろうと思った。 どうにかはやりたい気持ちを抑えて、レオナを見据えて口を開いた。 「わかりました。レオナ様のお言葉に従います」 「ごめんなさい。ピピン」 ピピンの気持ちをわかっていて、ピピンの要望にこたえられないレオナの痛まれない心境を、ピピンは不謹慎ながらもその心遣いがありがたく感じていた。 「いいえ。レオナ様のいうとおりですので、気にしないでください」 レオナの責任ではないのですよというように、首を振って答えるピピン。 ピピンの優しさのある言葉に少々心の負が和らげていくのを感じてたレオナは、ピピンに礼を言った。 「ありがとう。ピピン・・・・・・。アポロ、彼を部屋へ案内してくれないかしら?」 「承知いたしました。ピピン殿、こちらへご案内しましょう」 「感謝いたします」 ピピンを引き連れて王の間を後にするアポロたち。 彼らを見送ってから、レオナはこれから先とてもつない敵が復活しようとしている、そんな予感がしてならなかった。 (もしかしたら・・・・彼女なら、何かがわかるかもしれないわね。) 傍らにいるアケミのほうへ振り向いて声をかけた。 「アケミ、頼みがあるわ」 「はっ、なんでしょう?」 「テラン国のメルルとポップを呼んで欲しいの」 「承知いたしました。すぐに赴きます」 アケミが一礼をしてこの場を後にしようとした矢先、何の前触れもなく、扉が開けられ、青年の声がふってきた。 「その必要はないぜ。女王さん」 得意げに微笑む黒髪の青年と、蒼い滴の形をした宝石を額に付けられている漆黒の長髪の女性が現れた。 レオナは久しぶりに会った喜びを隠す事もせずに彼らの名前を呼んだ。 「ポップ君!メルル!!」 「よお、久しぶりだな!」 「お久しぶりです。レオナ様」 軽く手を上げるポップと恭しく会釈するメルル。 後書き・・・(反転) H17.4.15up 前回と比べてめっちゃ、短い・・・・!!? でもでも、次回は長い・・・と思うんで、ここは目をつぶって・・・・。 (え!?だめ?ううぅ・・・。どうしても?だめ?しくしく・・・) ・・・・・さてとっ、冗談はさておき・・・。←(開き直り早っ!) 再びレオナ登場! で、オリキャラ三人も出てしまったですね。 名前の由来はもう知っている人が多いと思います。 違和感あるかもしれないけれど、その点はどうかご勘弁を・・・。(^_^;)ヾ 最後まで読んで下さってありがとうございます。 では、次の話で逢いましょう。 |